仮想通貨 最終更新日: 公開日:
本記事では、仮想通貨にかかる税金やその計算方法、ツールまでを網羅的に解説していきます。
仮想通貨で利益が出たけどその税金についてが曖昧な方や、税金の計算方法をしっかり押さえておきたい方などは、是非参考にしてみて下さい。
目次
2018年11月現在、日本の国税庁が公表している税制では、仮想通貨の売買によって得た利益は「雑所得」として分類され、所得税の総合課税の対象となり確定申告が必要となります。
雑所得とは、以下の9種類の課税所得のいずれにも該当しない所得の事をいいます。
主に雑所得は国民年金や厚生年金といった「公的年金」の課税所得として該当しますが、仮想通貨も現状はこの雑所得として区分され、自身が得た全所得と合算して所得税の計算を行う必要があります。
では、その仮想通貨にかかる税率はいくらなのでしょうか。
仮想通貨で得た利益は雑所得に区分される為、「累進課税」の対象となり、以下の図に従って他の所得と合計して算出されます。
出典:国税庁
このように、合計所得額によって税率が決定されるのですが、4,000万円を超える額には最高税率である45%が課せられる事となります。
さらに、上記の税率に加えて日本では一律10%の「住民税」が課せられる事となるので、4,000万円以上の所得を得た場合は実質55%の税率がかかる事となるのです。
では、仮想通貨の売買において、どのタイミングで税金が課せられるのかについて見ていきます。
仮想通貨で得た利益が税金の課税対象となるケースとして、まず「含み益が出ている仮想通貨を日本円と交換した時」が挙げられます。
例えば、以下のケースは雑所得として税金の課税対象となります。
そして本ケースの場合、仮想通貨の売買における利益(課税所得金額)は以下の通りです。
なお、日本円以外にも「含み益が出た状態で他の仮想通貨と交換した時」は税金の課税対象となります。
例えば、以下のケースは雑所得として税金の課税対象となります。
そして本ケースの場合、仮想通貨の売買における利益(課税所得金額)は以下の通りです。
こちらも日本円と交換した時と同様に、「売却額-取得額」で利益を算出する事に変わりはありません。
なお、含み益を抱えていても他の仮想通貨と一切交換しなかった場合は、税金はかかりません。
会社から給料を貰っている「給与所得者(サラリーマン)」の場合、仮想通貨によって得た利益が年間20万円以下であれば税金の課税対象外となり、確定申告を行う必要がありません。
これは仮想通貨に限らず、本業以外で得た副業収入であれば全て該当しますが、住民税の申告においては別途必要となるので注意が必要です。
また、会社からの給料が年間2,000万円を超える人は年末調整を行わない為、仮想通貨における利益も同時に確定申告をする必要があるので注意が必要です。
仮想通貨の税金を算出する場合、以下の図から所得金額を確認し、そこから「税率」を掛けて「控除額」を差し引きします。
出典:国税庁
例えば、仮想通貨による利益が400万円だった場合、計算式は以下の通りとなります。
(※本来は他の所得と合算されますが、今回はわかりやすく仮想通貨による所得単体で計算するとします。)
また、仮想通貨で1億円の利益を出した「億り人」の場合、税額は以下の通りとなります。
このように、仮に仮想通貨で1億円を稼いだとしても、その内の約4割が所得税として抜かれてしまいます。
仮想通貨取引によって被った損失は、損益通算が出来ません。
損益通算とは、損失を出して赤字となった所得を他の所得と相殺する方法であり、この損益通算を行う事で、課税対象となる総所得金額を減らす事が可能です。
しかし、仮想通貨は現状損益通算を行う事が出来ず、損失額を翌年に繰り越しする事も不可能です。
なので、損失を被った場合に損益通算や損益の繰り越しが出来る「株式投資」に比べると、仮想通貨の税制はやや不利な条件となっているのが現状です。
なお、仮想通貨の利益に対する課税は「海外取引所で売買した場合」でも同様に課されます。
ただ、海外の取引所のほとんどは日本円ペアが存在しない為に、売買によって得た利益や取得単価を日本円レートに換算しなければなりません。
なお、各仮想通貨の日本円レートは「CoinMarketCap」という仮想通貨の情報サイトにて確認する事が出来ます。
なので、自身で事前に取得単価や売却額等を同サイトで確認しておくようにしましょう。
>>>CoinMarketCapの公式サイトはこちら!
「仮想通貨の税金は深刻しなくてもばれないんじゃないか」と思う方も多くいらっしゃるかもしれませんが、インターネットのインフラが発達している現代において、全てインターネット上で取引されている仮想通貨の利益に関する脱税が「絶対にばれない」という保証はありません。
また、仮想通貨の取引記録はブロックチェーンに全て記録されている為、脱税すれば後に罰せられるリスクも高まります。
なお、もしも脱税が後に税務当局にばれてしまった場合、「延滞税」「無申告課税」「重加算税」といった様々なペナルティが課せられるので、ばれなかったとしても常にリスクと隣り合わせで過ごして行かなければなりません。
よって、脱税は辞めて、健全に自ら申告を行った方が安全でしょう。
では、仮想通貨に掛かる税金を便利に計算出来るサービスやツールを紹介していきます。
出典:Guardian
Guardianとは、信頼できる税理士が仮想通貨の税務に関するサポートを行ってくれるサービスです。
Guardianは煩雑な税金に関する計算や確定申告書類の作成のフルサポートが受けられ、取引履歴を取得出来る全ての取引所に対応しています。
なお、同サービスの料金は仮想通貨に関する確定申告の依頼は50,000円、損益通算の作成依頼は80,000円となっています。(※2018年11月22日現在)
出典:Cryptact
Cryptactとは、仮想通貨の損益計算や確定申告を簡単に行えるツールです。
Cryptactは2018年11月22日現在、対応取引所19箇所、対応通貨2,800種類以上と幅広く、今までに3万人以上のユーザーに利用されている実績があります。
なお、同サービスはメールアドレスを登録すれば無料で利用出来るので、気になる方は是非利用してみて下さい。
2018年11月21日、国税庁は仮想通貨に関する確定申告を簡素化する事を目的とした「年間取引報告書」の構想を発表しました。
出典:国税庁
年間取引報告書は取引所側が発行し、それを顧客となる個人が入力して提出する形が想定されています。
仮想通貨に投資するユーザーの中には、仮想通貨の取得単価や売却額を忘れてしまっている人も少なくありません。
しかし、今回の報告書の提案によって、納税に関するプロセスの簡素化、申告漏れや脱税等を回避出来る事に繋がるでしょう。
では、日本以外の国の仮想通貨に関する税率はどうなっているのでしょうか?
以下より、節税効果が見込める海外の税率に関してを見ていきます。
シンガポールでは、仮想通貨の売買によって得られる利益は「キャピタルゲイン税」に該当しますが、シンガポールではキャピタルゲイン税に一切の税金が掛からないので、仮想通貨による売買益は全て無税となります。
ただ、その利益が何度も繰り返し売買を行うような「デイトレード」によって生じた場合、取引内容によっては「所得税」に該当し、個人で最大22%の税率が課される事となります。
マレーシアでは、仮想通貨の売買によって得られる利益に税金は一切かかりません。
マレーシアは仮想通貨以外の株式投資による売却益や配当に対しても税金が一切課せられず、上述したシンガポールに並び仮想通貨の税金対策として有利な国として知られています。
タイの場合、仮想通の売買によって得られる利益への税金は一律で15%となっています。
なお、タイでは日本とは異なり、自国通貨であるバーツに換金した時に初めて税金が課せられ、仮想通貨同士の交換の場合は税金の課税対象となりません。
以上が仮想通貨の税金についてでしたが、現状日本では仮想通貨によって利益を得た場合、住民税と合わせると最大で55%の税金が課せられる事となります。
そして最大で55%の課税対象となるにも関わらず、損失を出すと損益通算もその繰り越しも出来ないという圧倒的不利な状況にあり、これが仮想通貨投資のデメリットであり注意点です。
今後の税制がどう変わっていくのかはまだまだ読めませんが、既存の株やFXのような「分離課税」が適用されれば、現在よりも仕組みや税制がさらに効率的となり、参入者も増えていくのではないかと予想しています。
キャッシュレスPAY編集長。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。 新卒で大手総合金融機関であるSBIホールディングスに入社し、広告の運用やマーケティングに従事。 その後11ヶ月で退職して、現在は前職で培ったフィンテックやFPに関する知識を活かし、キャッシュレス決済に関する研究を続けている。